こんなナイーヴで、しかも仰々しい言葉で始めることが、よいことだとは、あまり思えない。だが、思い切って、告白する気持ちになって、笑われるのを承知で口にしてみよう。――わたしは、人類の歴史を肯定したい、と思う。人類を、肯定し […]
死んで会えなくなることと、遠く離れていて会えないこととは、同じであるように思える。 ……こんなことを言うと、死をあまりに軽視していると思われるかもしれない。たしかに、身体的な死は重要である。なぜなら、もう会うことはできな […]
歴史とは、何か。つきつめていえば、それは、過去を現在に回収する装置である。もっと端的にいえば、過去を現在に変える装置である。歴史の装置は、だから、過去ではなく、《現在》に置かれている。純粋に過去そのものであるような歴史は […]
他人について知りたい、という欲望は、ごく自然なものだろう。ひとが、他人の何に興味を持つかはさまざまであろうが、やはり、気になるのがプロフィールではないか。そこには、名前や出身、血縁や地縁、生没年のみならず、場合によっては […]
オスカー・ワイルドは言っている。「けっして起こらなかったことを正確に記述するのが、歴史家の仕事である」と。JLGの作品にも引用されていたこの言葉は、いかように解釈されるべきなのだろうか。 歴史家は、その探求の対象に、前期 […]
「地獄の時間としての「現代(モデルネ)」。この地獄の懲罰とは、いつでもこの一帯に存在している最新のことがらであり続けねばならないということだ」 「まさしく最新のものにおいて世界の様相がけっして変貌しないということであり、 […]
似ていることを云々することは、似ていないことを際立たせることであって、実際にはそちらの方が重要であり、それはヘーゲルが反面教師的に教えてくれたことでもある。似ている、と言うことは、似ていないと言うことに等しい。…… 歴史 […]
真実は、今、ここに瞬間的にしか存在しない。真実は、未来においては、希望として未規定の形に人々の心に残されたままであり、過去において真実は、運命あるいは歴史のなかに、人々の心に変形させられた記憶として、断片的に残されるのみ […]