ヴェンダース『ことの次第』

cinema
2000.09.15

まちがいなく、物語は死と直結している。ヴェンダースがいうように、物語、あるいは歴史は、死において語られるほかないのである。

…………

映画撮影のロケ地となった、ポルトガルのとあるホテルに集まったスタッフたち。だが、突然撮影の中断を余儀なくされる。フィルムが底をつきたのだった。ヨーロッパの西の果て、大西洋をへだててアメリカ(もっぱら物語の映画を得意とする国である)を望むこの地にかれらは取り残され、さながら遭難者の集団と化す。「人生に物語は必要ない」「物語が映画を殺す」…。死の結末は、ヴェンダースの強烈な、皮肉へのさらなる皮肉である。後半部の死にいたる物語によって、この映画が突然生き返るように感じるかもしれない。だが、それは誤解である。この映画は、本質的に生の映画であり、主人公の死は、勝利者として生き残ることを意味し、物語を含まない生の映画への過剰すぎる賞賛であろう。

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監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ヴィム・ヴェンダース、ロバート・クレイマー
撮影:ヘンリー・アルカン
編集:バーバラ・フォン・ヴァイタースハウゼン、ピーター・プルツィゴッダ
音楽:ユルゲン・クニーパー
出演:パトリック・バウシュ、ヴィヴァ・アウデル、イザベル・ワイニガートン、サミュエル・フラー
1981年/西ドイツ/121分/白黒/スタンダード

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