ゴダール「最期の言葉」

cinema
2001.04.20

“フィガロ誌”十周年を記念して製作された短編集『…の見たフランス(パリ・ストーリー)』のなかの一篇。なかにはアンジェイ・ワイダの作品もあり、これは一瞥に値する。

短編集のなかではいつも際立った存在となるJLG作品は、ここでも例の漏れず傑出している。JLGのフモールたっぷりの映像、音。「音楽」と「死」。音とイマージュの世界は見事に交錯しあい、JLGならではの世界が縦横に繰り広げられている。いつものように軽快な手練で扱うのは、1942年7月27日、33歳でナチスにより処刑され、この世を去ったフランスの哲学者、ヴァランタン・フェルドマンである。あの古い記憶、次世代の者にはもはや詳細は隠蔽されてしまった古い記憶は、しかし、ここではなんら絶対性をもつことはない。ヘブライ的な絶対性をもつことなく、ただ、キルケゴールにとってのイエスのごとく、すなわち、雑踏のなかで不意に出くわすかもしれない「イエス」として、存在している。だが、今ここと、過去が通じることはない。「これ以上先へ行くべきではない」かのように、訪問者は、ヴァイオリニスト=イエスとともに立ち止まる。古い記憶が、最期の言葉が、ふたたび意味を取り戻すことなどありえない。ただ、音楽だけが、過去と同じように反復されるのみである。……

[amazon asin=”B00005FYJU” /]

監督:ジャン=リュック・ゴダール
撮影:ピエール・バンジェリ、ピエール=アラン・ベス
録音:ピエール・カミュ、ラウル・フリュオー、フランソワ・ミュジ
衣装:カトリーヌ・ルロイ
音楽:J・S・バッハ(パルティータ)
制作:アンヌ=マリー・ミエヴィル、ヘルフ・デュアメル、マリー=クリスティーヌ・バリール
製作:エラート・フィルム/ソクプレス/ル・フィガロ/アンテンヌ2/CNC
出演:アンドレ・マルコン(将校)、ハンス・ツィシュラー(訪問者)、カトリーヌ・エメリー、ピエール・アモール、ミシェル・ラディク
1988年/フランス/13分/ヴィデオ

HAVE YOUR SAY

_