INTRODUCTION

人文学の正午研究会について

「人文学の正午」研究会は、若手研究者を中心に発足した人文学の総合的な研究会です。

1)人文学再考

人文学とは何でしょうか。

現在学術の世界は多様さを深めています。高度に専門分化が進み、人文学という広汎な概念は最早そぐわないとも言われます。しかし私たちはもう一度人文学という出発点を再考したいと考えました。

近代的な分類においては、人文学の基軸をなすものは文学・哲学・歴史となります。 私たちはこうした旧来の学問領域に立ち帰ろうと言うのではありません。むしろ人文学と呼ばれてきたものが、何を求め、何を願ってきたか、その地点から再考したいと思うのです。

文学も哲学も歴史も、皆根源において同じ動機から出発したものです。それは人間を知り、自己を知り、生を豊かにしていきたいという願いに他なりません。人文学とは、人間を知るための学問であり、そしてまた何より自己に関わる学問と言えます。自己から出発し、より良きものを目指す知的な活動です。

私とは何者であり、何を願い、何を果たすのか、その問いの様々な現われ方が文学であり、哲学であり、歴史でした。この原理的な問いは、つねに現代的な課題です。そして既存の「人文学」の学問領域に限られる問いではありません。どのような領域であっても、知に携わる者が自己の問題に立ち帰る時、必ず本来の人文学の動機が姿を現わしています。

「実学」という、近年強まる観点からは、人文学は価値あるものとされていないかもしれません。しかし私たちは、歴史において、人文学がつねに求められてきたことを知っています。人文学はただ、ある種の権力の装置として求められてきたのでしょうか。そのようには私たちは考えません。知的なものを求める営為は、ソクラテスの昔からずっと、人間の本質的な幸福に関わっています。そしてその追求の根幹をなすものが人文学だからこそ、重きをおかれてきたのだと私たちは思うのです。

幸福ということに正面から向かう、人文学に携わる人間は、時として理想を追い、観念的な世界を生きる者のようにも言われます。しかし我々にとっての理想も現実も、人文学の主題があることによってまっすぐに問うことができます。人間の光栄も悲劇も、また同じです。そしてそれは自己にとっての喜びと悲しみとは何か、という問いに他なりません。

戦争も平和も、人文学によって、私たちは自分のものとして、考えることができるのです。

私たちは何よりも人間を知り、自分を知る学問として誇りを持ちたいと思います。

2)新しい方法論の実践の場として

上記のような願いから、「人文学の正午」は始まりました。ヘーゲルの言うような、出来事を追認するだけの黄昏の学問ではなく、今現在の自己の生のための学問として人文学を捉えたいという思いがこめられています。私たちが共有しているのはその一点です。一人一人、そこから自由に問いを立て、自由な方法で論じ、皆と議論を重ねながら理論的な水準を高めていきたいと思います。

一人一人の自己に根ざした主題を立てること、それは既存の学問領域の方法では十全に追究できない場合があります。自然と新しい方法論の必要性を感じる機会が多くなるでしょう。新しい方法論を生み出すことは、大変な困難を伴います。失敗に終わる可能性の方が高いかもしれません。しかしながら、方法論の創造は学問の最も本質的な部分です。それゆえ「人文学の正午」は、参加者が恐れず新しい方法論に挑む場を提供したいと思います。若い研究者が様々な追究を通して、長い時間の果てに独自の方法論を作り上げていく、最初の一助となれれば幸いです。

3)若い研究者のために

「人文学の正午」は、若手研究者のための、そしてこれから研究に向かう若い人たちのための企画です。学問によって自己を豊かにしたいという動機を持つ方の自由な参加を期待します。学部生、大学院生、OD・PD、あるいは社会人の方、領域や立場は問いません。

日本には現在、多くの若手研究者がいますが、専門分化が進んだ学術環境では、孤立化が進んでいると言えます。その一方で、近年の学術の動向においては、領域を超えた総合的な研究が強く求められています。そうした状況の中で、若手研究者自身、大きな問いに向かいたいという願いを持っていますが、大学・専門を超えて相互に知り合う場が非常に少ないことも事実です。「人文学の正午」は、そのような場の一つとなっていくことを目指しています。

またこれから学問を深めていく学部生の方々には、様々な学問領域の思考に触れ、自分の主題を見つけてゆく機会となるよう、広く開かれた場にしていきたいと思います。積極的な参加を歓迎します。

4)芸術と学術

「人文学の正午」は、自己の生という主題から、芸術についても高い関心を持っています。

現在の日本の知的状況では、芸術と学術が本質的に相容れないという理解が強くあります。しかしプラトンが哲学者でありながら詩人であったように、芸術と学術は決して相反するものではありません。自己の生を問う姿勢が、時として学術上の表現に見え、芸術上の表現に見えるとしても、最初の動機において隔たりはないのです。むしろ芸術表現の指標とされる、「美」という主題は、知的な営為にとっても看過されるべきものではありません。

「人文学の正午」は、芸術的な営為もまた「人文学」として重視していきたいと思います。

*学部生・若手研究者の方へ
関心を持たれた方は、ぜひご自由にご参加下さい。沢山の方々のご参加をお待ちしております。ご不明な点がありましたら、事務局へご連絡下さい。

*研究者の方へ
このような「人文学の正午」という企画の理念に賛同していただける方を広く募集しています。ご氏名とご所属を事務局宛へお知らせ下さい。もしよろしれば、本webにてもご氏名を掲載させていただきますので、その可否についてもご記入下さい。

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運営委員:平野明香里(奈良女子大学)

編集委員:田中希生(奈良女子大学)

Associate Editors:

Adivisory Council:杉本淑彦(京都大学)、小林啓治(京都府立大学)、川瀬貴也(京都府立大学)

オフィス:奈良女子大学近現代日本史研究室内人文学の正午事務局

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会員サイト:田中希生(Ex-Signe)

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